動的平衡(dynamic equilibrium)

日本Gボール協会理事長 長谷川 聖修

謹んで新年のご挨拶を申し上げます。

私たちはひとたび椅子に座ると、立っているときよりも「楽に」感じてしまい、ずっと座り続けてしまいます。その結果、日本人の成人の平日の座位行動時間は、世界20か国の中で最も長く、1日平均約7時間にも及んでいるそうです(1)

人間は本来動物の一種ですから、じっと静止していることは、心身共に様々な問題を引き起こします。しかしながら、一方で私たちの暮らしぶりは、限りなく効率化と省力化が進み、ますますからだを動かさなくても済む社会になっています。

このアンバランスを考える上で、生物学者の福岡伸一氏が提唱している「動的平衡どうてきへいこう」という概念は示唆に富むものです。単に、静的と動的という対立だけでなく、本来、生きているということは、生物が絶え間なく動き、外界の物質と入れ替わりながらも全体として恒常性が保たれているとのこと。まさに「諸行無常」の世界を、「諸行無常」の身体で私たちは生きているのです。外界の多様な変化に対応しつつ、常に変化していくことが求められています。その意味で、揺れ動くGボールは、常に身体への変化を求め、動き続けるシンボルとも理解できるでしょう。

2025年も世の中は様々に揺れ動いていくことでしょう。その変化に柔らかく、かつダイナミックに対応しつつ、しなやかに動く楽しさを会員の皆さんと共に広めて行きましょう!

(1) Bauman A, Ainsworth BE, Sallis JF, Hagströmer M, Craig CL, Bull FC, Pratt M, Venugopal K, Chau J, Sjöström M; IPS Group. The descriptive epidemiology of sitting. A 20-country comparison using the International Physical Activity Questionnaire (IPAQ). Am J Prev Med 41: 228-235, 2011.


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